【レビュー】おすすめのイヤホン:qdc Anole VX-S

2020年3月15日

qdc Anole VX-S
qdc Anole VX-S
qdc VX-S – 10 Armature Anole (標準)

qdc Anole VX-Sは中国のカスタムIEMでリーディングブランドとなっているqdcのハイエンドモデルです。数々のリスナーから賞賛の言葉を惜しみなく贈られているqdcの全てが詰まった逸品です。

ビルドクオリティ

Anole VX-Sは銀箔で花崗岩の高級感を再現したかのようなオシャレなデザインを持っています。その表面に磨き込まれたVXのトレードマークと先端部側にqdcのロゴがあしらわれています。そのデザインは決して華美ではありませんが、人によっては派手だと感じるかも知れません。

本体上部にはインピーダンスを調整し、音質を変化させるスイッチが付いています。それぞれが高音・中音・低音に対応しています。これは指で調整することは不可能なので、付属のクリーニングツールで弾いて切り替えます。

ベーススイッチは5dBほど低域を押し上げ、ミッドスイッチは同様に2db程度中域を押し上げます。トレブルスイッチは超高音域を調整するようで、ほとんど音質変化は感じられませんが、明るさが増します。

製品は二層式の豪華なパッケージに収納されています。クリーニングツールやアダプター類は豊富に添付されています。

仕様など

ドライバー バランスドアーマチュア型(BA型)
ドライバー構成 10ドライバー (Low x 4, Mid x 2, High x 4)
周波数特性 10Hz – 20kHz
入力感度 110 – 113dB SPL/mW
インピーダンス 17 – 22Ω
イヤホン端子 qdc社独自の2pin端子
ケーブル導体 純銀導体(4本)、純銅導体(4本)
入力端子 3.5mm ミニ端子
ケーブル長 約122cm
付属品 8-Wire Premium Earphone Cable
オリジナルレザーケース
クリーニングツール
保証書(1年間)

e☆イヤホンの商品ページ

音質

スイッチを全部OFFにしたqdc Anole VX-Sは価格帯の中で特別優れているわけでも、ずば抜けた個性を持っているわけでもありません。場合によって下位機種のAnole V6とほとんど変わらない印象を受けます。

低域はダイナミックドライバーのようにパワフルな印象を与えます。qdcは低域に太さのある音を提供することで知られているので、驚くことではありませんが、バランスドアーマチュアの詳細な音を求めていた人には少し意外に思われるでしょう。とくにバススイッチをONにすると、低域に厚みが出て重量感が感じられるようになり、ブーム感と躍動感が増して音楽全体の中でかなり目立つようになります。これはリスニングライクなオプションが提供されているという意味で歓迎すべきことかも知れません。低域は下に深く広がる重低域とそれよりわずかに厚い豊満な中低域で性格付けされています。

中域では中低域が盛り上がっていますが、中域のメインストリームに被さることはありません。移行はスムーズで人工的な印象はありません。中域の解像度は素晴らしく、ボーカルのディテールは詳細で、細部まではっきりと聞こえます。qdcらしく中域にもボディのある太さが維持されており、バランスドアーマチュアでありがちな、音の線が細い印象はありません。ミッドスイッチの調節によって、中高域は少し前屈みにすることができ、女性ボーカルにより高い明瞭性を感じることができるでしょう。

高域はやや強調されている印象を与えます。音場全体の重心を上方向に向かせていると感じるかも知れません。尖りは身長に抑えられているものの、かなり煌めく高域はディテール感にも優れています。トレブルスイッチはシャリシャリ感を強調し、シャープネスのある輝きを加えるので、明るさは増しますが、少しきつめの音に聞こえるかも知れません。高域の伸びと空気感は増しますが、少し過剰に感じられます。

コストパフォーマンス

低域のスイッチはかなり効果が高く、リスニングライクな音とモニターライクな音を1機種で同時に楽しめるというのは魅力的かも知れません。しかしqdc Anole V6から大きな変化を感じないので、多くの人にとって敢えてこれを選ぶよりV6にとどまった方が満足できるかもしれません。

qdc Anole VX-S

7.7

装着感

9.0/10

高音

9.5/10

中音

9.5/10

低音

9.5/10

コスパ

1.0/10

Pros

  • 高いビルドクオリティ
  • qdcらしい濃厚サウンド
  • 音質調整スイッチ

Cons

  • コスパが悪い
  • Anole V6とそれほど違わない音質