【レビュー】おすすめのイヤホン:Empire Ears Legend X
大人気カスタムIEMメーカーEmpire Earsの最高級IEMがこのLegend Xです。まさに伝説を体現したかのような、イヤホンとは思えない生々しい低域表現と音場を持つ、ヘッドホンレベルの音を真に実現しているイヤホンです。
最高クラスのビルドクオリティ
目玉が飛び出るような価格のイヤホンですが、ビルドクオリティは最上級機種にふさわしい質感に満ちています。ユニバーサルモデルをレビューしていますが、この機種にはカスタム版も用意されており、カスタム版では豊富なデザインから好みのフェイスプレートを選ぶことができます。日本限定の黄金に輝くフェイスプレートは細やかでありつつも荒々しさも感じさせるヘアラインが、深みのある表情を作り、渋い色から鮮やかな色まで、多彩な光沢を見せてくれます。
音質
Empire Earsのフラッグシップということで、当然のことながら質の良い低域を期待してしまいます。低域はEmpire Ears機としては思ったよりも前に出てこず、むしろ深掘りされて胸をえぐるかのような低い位置に感じられます。ホームシアターのウーファーが感じさせる、底に熱い地熱の脈動が感じられ、エネルギッシュな音です。そうですね、競走馬の疾走する姿をイメージしてください。あの振動感を伴った力強い馬足の音に似た馬力を持っている低域です。解像度は充分にありますが、重低音のパワフルな鳴動によって太く濃い中低域はややウォームに聞こえるかも知れません。雷鳴のごとき轟きは、その小さな筐体から鳴っているとは信じられないほどですが、それによって必要以上に低域がかき乱されることはありません。しかしクリアな印象とは異なる低域だということは頭の片隅に記憶しておくと良いかも知れません。
低域の存在感が強いですが、中域も十分に魅力的です。パワフルな低域に比べると、こちらはふっくらとした中低域付近から滑らかに上へつながっていきます。非常にシームレスでボーカルにはつややかな甘味が感じられます。全体的に穏やかでウォーム、(おそらく低域の馬蹄のような轟きが僕にそうイメージさせたのですが、)広々とした草原を思わせる中域の中で、とっかかりのような形で鮮やかに濃く聞こえるギターなどの弦楽音は溌溂としています。クランチの歪みが実に鮮やかに空間を色づけすることに注目してみてください。始めはキュイとエッジの締まりを見せつつも、空間にジュワッと沁み入る広がりを持つ音に、草原をなでていく風の焦げっぽいような薫りを感じることができます。音の質感が非常に大切にされていることをこの中域で発見できるでしょう。
天高く馬肥ゆると言いますが、草原の青空を思い浮かべてください。そのイメージそのままにLegend Xの高域は広がっています。不快感を起こす刺さりや尖りはなく、空間は非常に開放的です。馬蹄の轟きが空へ高く抜けていくのを想像してみてください。Legend Xの低域と高域の関係はまさにそのようなものです。下で深く鳴動する音が、そのまま高域へと自然に抜けていく広大な空間が広がっており、低域のエネルギーは滑らかに高域へと伝わって、空に消えるのではなく、吸い込まれるように吹き抜けていくのです。
コストパフォーマンス
現状で全イヤホンを見渡しても、最も上質な低域表現力を持っているイヤホンであることは間違いありません。それは主張が強い感じではなく、エネルギーそのものといったような感じの音です。その音は支配力よりも熱量を感じさせます。中高域の解像度はまだ他のイヤホンでも再現可能かもしれませんが、この低域はこのイヤホンでなければ味わえないでしょう。そこに価値を見出すかどうかで買うか買わないかが決まります。完全に好き嫌いの世界になるので、コスパは意味がないですね。
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