【レビュー】おすすめのイヤホン:Jomo Audio Trinity
Jomo AudioのハイエンドユニバーサルIEMがTrinityです。その雄大な音場表現はまさに巨艦といっていいほどのフラッグシップイヤホンです。
ビルドクオリティ
パッケージングはさすがに豪華ですが、付属品も贅沢と言うほど多くはなく、高級IEMにしては意外と派手さはなく、基本的には5万円くらいのユニバーサルIEMとあまり違いを感じない作りです。ビルドクオリティは充分に高く、耳へのフィットも良くて遮音性は高いです。しかし、見た目の高級機らしさというものには少し欠けるかも知れません。
なおノズルはブラスノズルとステンレスノズルの2種類がありますが、今回レビューする個体はブラスノズルです。
仕様など
ドライバー構成 2×静電型ドライバー 4×バランスドアーマチュアドライバー シングル8mmダイナミックドライバー
e☆イヤホンの商品ページ
クロスオーバー 4WAYクロスオーバーネットワーク
再生周波数帯域 20Hz〜80KHz
インピーダンス 30Ω@1KHz
内部配線 高純度銀メッキ銅内部リッツ配線
シェル 独自の3Dセミカスタム人間工学的ユニバーサルシェルデザイン
ノズル 光沢度の高い独自のソリッドブラスノズルデザイン
音質
1基のダイナミックドライバー、4基のバランスドアーマチュアドライバー、2基の静電型スーパーツイーターを搭載したモンスターマシンです。2基の静電型スーパーツイーターは極限まで超高域を拡張し、あらゆるイヤホンを超越した音質再現力があるとされています。スペック的には20hz~80khzの再生周波数が理論値として提供されています。
このイヤホンを語るに当たってはやはり高域からにならざるを得ません。あらゆる面でこれまでのイヤホンとは質的に異なった高域音を持っており、多くの人に感動をもたらすとともに失望の声も少なくありません。
弦楽を聴いてみましょう。そこには驚異的な透明感があり、弦楽の色味の変化がそのまま粒立ちしてくるような、しかも空気感に包まれて空間に溶け込みながら聞こえるような、あまりに洗練された風通しの良い、穏やかで、輝きつつもなめらかな感触の音を聴くことができます。この音にはしかし、IEMにありがちな派手さが全くありません。あくまでも優雅で、むしろ無色透明に近く、自己主張するところの少ない音です。惹き込んでくる魅力はありますが、わかりやすいキャラクターではありません。
したがって、このイヤホンのパーカッションにキレを感じるということは少し難しく、シャキッとした歯ごたえはあまりありません。それはふわーっとした空気感を多分に含んだ音です。シンバルの音を聴いてみましょう。驚くほど細かい粉塵が舞うような豊かな空気感があるにも関わらず、その音は目立たず、自然に、むしろ奥ゆかしいほどの落ち着きを持って聞こえてくるはずです。美しく、繊細ですが、輝きに乏しく、鈍い印象も同時に与えるものです。空気感が非常に豊かに表現されるために、高域は空間に溶け込んでしまうという驚くべき現象がそこにありますが、聞き疲れしない代わりに、手を伸ばしても少し遠くに行ってしまうくらい掴み所の難しい音でもあります。
さて、中域は価格を考えても充分なディテールとサウンドステージを持っており、とくに奥行きが優秀です。中高域に最も存在感があり、下では低域の影響で少し奥まって聞こえます。ボーカルは前方にあることは事実ですが、あまり浮き上がってきません。ボーカル重視の音に慣れていると、むしろ後ろに下がってるように感じるくらいです。一般的に女性ボーカルを重視するイヤホンが多いですが、このイヤホンはどちらかというと男性ボーカルを支持しているようです。女性ボーカルはふっくらとした甘味がありますが、明るさはそれほど強くないので輝いて聞こえるほどではありません。男性ボーカルはよりはっきりとディテールが感じられます。
低域は雄大です。全体的に暖かみと厚みがあります。しかし、細部のディテールは詳細に再現されています。ややゆったりと遅い印象を与える低域ですが、深さも丁寧に再現されます。とはいえ、あまりにも雄大な低域で知られる、Empire Ears Legend Xほどの壮大なスケール感はありません。低域好きの人には若干物足りないかも知れませんが、それでも充分にライブ感を感じさせる情報量のある低域です。
コストパフォーマンス
コスパはよくありません。この価格帯のイヤホンに手を出そうと思う人数は限られているでしょう。その法外な値段設定は多くのコンシューマーにとって顧慮に値しません。一部のハイエンド機をこよなく愛する変態向きですが、それでもSONY IER-Z1Rで普通は充分に満足できるはずです。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません