【レビュー】おすすめのイヤホン:Empire Ears ESR
自社開発の独自ドライバーで音作りをしている職人気質のIERメーカーとして有名なEmpire Earsから、リファレンスモデルとして出されているイヤホンがEmpire Ears ESR(Empire Studio Reference)です。
高品位なパッケージと装着感
高級機だけあって同梱されているケーブルもEffect Audioの高品質なものが付属されています。やや太い印象を受けますが、取り回しは柔軟です。
イヤホン自体はかなり大きいですが、軽量なので耳に負担感はありません。収まりも良く、見た目の印象の割に軽い装着感を持っています。
音質
ESRの音質を特徴付けているものを僕なりに考えるとすると、やはり低域の充実感にあります。ESRはレファレンスモデルと名乗っていますが、低域は中立の範囲を少しはみ出て明らかに精彩の強い味わいに仕上がっています。その低域を中心に音楽をしっかり組み立てる三角形のサウンドを実現していますが、高域は若干シャープネスが強めに表現されているため、やや浮き上がって聞こえる傾向があります。シンバルの音はだいぶ前屈みに感じるかも知れません。そのせいでボーカルがときに埋もれる感じになる場面があることは事実です。一言で言うなら、いわゆる「ドンシャリ」な印象を受ける音質です。
低域はゆったりと力強く、そしてやや前面に配置されているように聞こえます。重低感の震えは音場全体に鳴動をもたらしますが、その存在感は音楽全体を破綻させるほど強いものではなく、中高域の解像度を阻害しません。中低域がタイトに領域を締め上げていて、音の混濁を防いでいるように聞こえます。そのため力強い重低感を感じながらも、それが音場全体に濁りや曇りをもたらすものとはなっていません。この良質な、お手本のような低域はまさに「レファレンス」と呼ぶにふさわしく、低域を好むリスナーをがっかりさせることはないでしょう。
低域の表現力の素晴らしさに比べると、中域は没個性的に聞こえます。ボーカルは楽器と近く、分離感は悪くありませんが、まれに埋没気味に聞こえます。とはいえ、レイヤー感に優れて楽器の個々の音色や定位感はしっかり独立して鮮明に聞こえます。 色味はややウォームな印象で聞き疲れしにくいです。 尖った感じはありません。
高域はかなり透明感を持たせられており、パリパリカリカリした硬い感じが出やすい音です。やや聞き疲れしやすい印象を受けますが、それでも尖りは丁寧に避けられています。弦楽の芯はきれいに見え、金管は明るく吹き上がりますが、その勢いのある音は鮮明で発色良くスリムではありますが、刺さる音ではなく気持ちよい清涼感をもたらします。
このイヤホンの利点は先に述べたように低域にあります。しっかりと黒い背景を形成する低域音のおかげで、中高域の音はより鮮明に浮き上がる印象を与えてくれます。音の持つ色がはっきりと見えることで、音のキャラクターはより明確となり、確かな音像に豊かな色彩が加わっています。アクリル絵の具で描いた絵画のように発色の良い音を楽しみたい人には有力な選択肢になります。
コストパフォーマンス
鮮明感の高い音響は魅力ですが、レファレンスという言葉から想像される、中立的な音を求めている人には少し演出感が強く、聞き疲れしやすい印象を与えるところがあります。また全体的に濃い感じなので、ボーカルは楽器に押されて聞こえやすいかも知れません。
また低域のスピード感はそれほど高くないため、Campfire Audio ANDROMEDAのようなコントロールされた理性的な低域ではなく、どちらかというと感情的であふれ出す感じがあります。中域では逆にANDROMEDAは表情を豊かにしていくのに対し、ESRの音は低域に比べて精彩を欠く印象を受けるかも知れません。女性ボーカルは明らかにANDROMEDAの方が表情豊かに再現されると感じると思います。
総じてこの価格帯ではコスパの概念は難しく、一概に決めることはできませんが、ESRは同価格帯で抜群に優れているとか大人気といった機種ではありません。
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